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そんなわけで、早々にお家を飛びだすと

そんなわけで、早々にお家を飛びだすと、いそいそとして東京駅へやって来たクルミさんである。 日曜日で、列車はわりにたて混んでいたが、それでも車室の一番隅っこに、まだ誰も腰掛けていない上等のボックスがみつかった。 一番隅っこであったことが、わけもなくクルミさんを喜ばした。 「ここなら、ガムを噛んだって、サンドウィッチを食べたって、恥かしくないわ」 こころゆくまで、一時間半の小旅行が楽しめるのだ。 まず、窓際へゆっくり席をとって、硝子窓を思いッきり押しあける。と、こころよい五月の微風が、戯れかかるように流れこんで来た。...

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最悪の場合がとうとうやって来たのだ

最悪の場合がとうとうやって来たのだ。先にも云ったように、採炭坑は謂わば炭層の中に横にクリあけられた井戸のようなもので、鉄扉を締められた入口のほかには蟻一匹這い出る穴さえないのであった。その坑内に密閉されて火焔に包まれてしまった筈の峯吉の屍体が、屍体はともかく、骨さえも消えてしまうなぞということは絶対にない筈である。ところが、そのない筈の奇蹟がここに湧き起った。係長は、己れのふとした疑惑が遂に恐るべき実を結んだのをハッキリ意識しながら、思わず固くなるのであった。―― 恰度、この時のことである。 不意に、全く不意に、あたりの静かな空気を破って、すぐ頭の上のほうから、遠く、或は近く、傍らの炭壁をゆるがすようにして、...

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プロアクティブが期待以上の効き目で満足しています。

以前からニキビは気になっていたのですが、 若い頃からいろいろな薬を試してみても あまりよい効果を感じられなかったので諦めていました。 プロアクティブの存在もコマーシャルなどで知ってはいましたが、 病院からもらった薬でも治らなかったものが 良くなるはずがないと思い込んで使うことはありませんでした。 しかし普段よく利用するポイントサイトで お得に帰るキャンペーンをやっていて、 この価格だったら買ってもいいかと思えるものだったので ダメ元で使ってみることにしました。 これが期待以上の効果を発揮してくれて、...

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さて女の告白が終ると

さて女の告白が終ると、係長は姿勢を改めて口を切った。 「いずれその時のことは、またあとから発火坑の現場について、お前の云ったことに間違いないか調べ直すとして……これは別のことだが、お前はあの時、兄に抱かれて納屋へ帰ったと云うが、確かにそれに間違いないか?」 しかしこれは、訊ねる方に無理があった。お品はあの時、恐怖の余り顛倒して岩太郎に抱えられた筈であるから、それから岩太郎と共に真ッ直ぐに納屋へ連れ帰されたかどうか、女自身にも覚えのない筈であった。しかし係長にして見れば、この場合お品も岩太郎も、共に怪しまないわけにはいかなかった。そこで係長は重ねて追求しようとした。...

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犬の幼稚園でお勉強

先月、ついに我が家に3ヶ月の子犬を迎えました。 そこで飼う前から気になっていていろいろ調べていたのが、犬の幼稚園のラブワンです。 飼うのはいいけど、平日は仕事もあるのでその間、子犬を1人きりにはできないし、犬を飼ったら犬の幼稚園に通わせたい!と思っていたのでさっそく、犬の幼稚園 江東区で調べてみました。 調べてみたものの、たくさんあって迷ってしましました。でも、電話したり見学に行った時に、いろいろ質問してみたりして、話を聞き今では満足のいく幼稚園を決めることがきました。 まだ通い始めて3週間ですが、うちの犬も幼稚園に行くのが楽しいみたいで幼稚園までの道のりの間ルンルンでしっぽだけではなくお尻までふっています。...

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そこで、歩きながら私が口を入れた

そこで、歩きながら私が口を入れた。 「しかし、もしもその機関車の操縦室の床に溜った血の量が、全体に少くなって来たのだとしたなら、雫の大きさは同じでも、落される間隔は、あたかも機関車の速度が急変したかのように、長くなるのじゃないかね?」 「ふむ。仲々君も、近頃は悧巧になったね。だが、もしも君の言う通り、そんなに早く機関車の方の血が少くなって来たのだとしたなら、この調子では、もう間もなく血の雫は終ってしまうよ。――其処まで行って見よう。果して君の説が正しいか、それとも、僕の恐ろしい予想に軍配が挙がるか――」...

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で喬介は再び歩き出した

で喬介は再び歩き出した。私は一寸身顫いを覚えながら、それでも喬介の後に従った。 嵐はもう大分静まっていたが、この附近の路面には建物がないので、広々とした配線構内の上には、まだ吹止まぬ寒い風が私達を待っていた。喬介は線路の上を歩きながら、何かブツブツ呟いていたがやがて私へ向って、 「君。この血の雫の跡を見給え。落された雫の量の大きさは少しも変っていないのに、その落された地点と地点との間隔は、もう二米余にも達している。僕は、先刻からこの間隔の長さが、追々に伸びて行く比率に注意しているよ。それは余りに速く伸び過ぎる。――つまり73号機関車は、あの給水タンクの地点から急激に最高速度で出発させられたのだ。――大体、入換用のタンク機関車などと言う奴は、僕の常識的な考えから割出して見ても、牽引力の大きな割に速力は他の旅客専用の機関車などより小さい訳だし、それに第一転轍器や急曲線の多い構内で、そんな急速な出発をするなんて無茶な運転法則はないんだから、この73号の変調は、先ずこの事件の有力な謎のひとつと見て差支ないね」...

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みち幅三間とない横町の両側には

みち幅三間とない横町の両側には、いろとりどりの店々が虹のように軒をつらねて、銀座裏の明るい一団を形づくっていた。青いネオンで「カフェ・青蘭」と書かれた、裏露路にしてはかなり大きなその店の前には、恒川と呼ぶ小綺麗な煙草店があった。二階建で間口二間足らずの、細々と美しく飾りたてた明るい店で、まるで周囲の店々から零れおちるジャズの音を掻きあつめるように、わけもなくその横町の客を一手に吸いよせて、ぬくぬくと繁昌していた。 その店の主人というのは、もう四十をとっくに越したらしい女で、恒川房枝――女文字で、そんな標札がかかっていた。横町の人びとの噂によると、なんでも退職官吏の未亡人ということで、もう女学校も卒えるような娘が一人あるのだが、色の白い肉づきの豊かな女で、歳にふさわしく地味なつくりを装ってはいるが、どこかまだ燃えつきぬ若さが漲っていた。そしていつの頃からか、のッぺりした三十がらみの若い男が、いり込んで、遠慮深げに近所の人びとと交際うようになっていた。けれども、酔い痴れたようなその静けさは、永くは続かなかった。煙草店が繁昌して、やがて女中を兼ねた若い女店員が雇われて来ると、間もなく、いままで穏かだった二人の調和が、みるみる乱れて来た。澄子と呼ぶ二十を越したばかりのその女店員は、小麦色の血色のいい娘で、毬のようにはずみのいい体を持っていた。...

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とにかく、そうして岩倉会社は

とにかく、そうして岩倉会社は、表面法律で許された二隻の捕鯨船で、その実、三隻それも一隻はぬけぬけと脱税までして、能率を上げていたんですよ……ところが、この釧路丸は贋物なんですから、船員の口から秘密の洩れるのを恐れて、まず根室の附近へは、絶対に入港も上陸も許さなかったんでしょう。むろん船員達は、荒男の集まりだけに、金にさえなれば根室なんかどうでもいい。一匹千円からする鯨のほうが、どれだけいいか判らない――とまア、そんなわけで、かれこれ一年たってしまいます。……ところが、ここに困った事は、独り者の船員達はともかくも、根室に妻子を置いてある砲手の小森ですよ。むろんあの男も、始めは他の船員達と同じ気持だったんでしょうが、段々日を経るにつれて、心の中に郷愁が芽生える。しかし船長は、危険を覚えて、絶対に妻子のところへ帰さない。が、盛上る感情って奴は、押えたって押え通せるものではないですよ……根室の近くへ漁に来たチャンスを掴んで、とうとう小森砲手は、脱走してしまったんです……」...

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もしも私が、この場合

もしも私が、この場合まるで知らない人の家へ飛び込んで、そのような場面にぶつかったとしたなら、恐らくこんな細かに現場の有様に眼を通したりしてはいられなかったであろう。恐怖に魂消て死人と見るや否や、そのまま飛び出して交番へ駈けつけたに違いない。しかしこの時の私には、目に見える恐怖よりももっと恐ろしい目に見えない恐怖があった。私はその家に飛び込むと、真っ先に大事な子供の姿の見えないのに気がついた。妙なことだが、眼の前に殺されている人よりも、奪われた子供の安否に焼くような不安を覚えた。私にも、及川や比露子と同じように、留守中の三四郎に対する責任があった。...

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