そんなわけで、早々にお家を飛びだすと
そんなわけで、早々にお家を飛びだすと、いそいそとして東京駅へやって来たクルミさんである。 日曜日で、列車はわりにたて混んでいたが、それでも車室の一番隅っこに、まだ誰も腰掛けていない上等のボックスがみつかった。 一番隅っこであったことが、わけもなくクルミさんを喜ばした。 「ここなら、ガムを噛んだって、サンドウィッチを食べたって、恥かしくないわ」 こころゆくまで、一時間半の小旅行が楽しめるのだ。 まず、窓際へゆっくり席をとって、硝子窓を思いッきり押しあける。と、こころよい五月の微風が、戯れかかるように流れこんで来た。...