なあに、こっちの迷惑より
「なあに、こっちの迷惑より、そういう御様子ではさぞ御当惑をなさるでありましょう、こう遣って、お世話になるのも何かの御縁でしょうから、皆さん遠慮しないが宜しい。」 と二人で差向で話をしておりまする内に、お喜代、お美津でありましょう、二人して夜具をいそいそと持運び、小宮山のと並べて、臥床を設けたのでありますが、客の前と気を着けましたか、使ってるものには立派過ぎた夜具、敷蒲団、畳んだまま裾へふっかりと一つ、それへ乗せました枕は、病人が始終黒髪を取乱しているのでありましょう、夜の具の清らかなるには似ず垢附きまして、思做しか、涙の跡も見えたのでありまする。...