ひら/\、と夕空の雲を泳ぐやうに
ひら/\、と夕空の雲を泳ぐやうに柳の根から舞上つた、あゝ、其は五位鷺です。中島の上へ舞上つた、と見ると輪を掛けて颯と落した。 (ひい。)と引く婦の聲。鷺は舞上りました。翼の風に、卯の花のさら/\と亂るゝのが、婦が手足を畝らして、身を※くに宛然である。 今考へると、それが矢張り、あの先刻の樹だつたかも知れません。同じ薫が風のやうに吹亂れた花の中へ、雪の姿が素直に立つた。が、滑かな胸の衝と張る乳の下に、星の血なるが如き一雫の鮮紅。絲を亂して、卯の花が眞赤に散る、と其の淡紅の波の中へ、白く眞倒に成つて沼に沈んだ。汀を廣くするらしい寂かな水の輪が浮いて、血汐の綿がすら/\と碧を曳いて漾ひ流れる……...