往来へころがる蜜柑の数もだんだん減って

Publié le par rikairyoku

往来へころがる蜜柑の数もだんだん減って、子供たちの影も鍛冶屋の店さきを散ってしまうと、家主は権太郎を呼びに行った。半七は煙草をのみながら表を眺めていると、壁色の空はしだいに厚くなって来て、魔のような黒い雲がこの町の上を忙がしそうに通った。海鼠売りの声が寒そうにきこえた。 「これは神田の半七親分だ。おとなしく御挨拶をしろ」と、家主は権太郎を引っ張って来て半七のまえに坐らせた。きょうは鞴祭りのせいか、権太郎はいつものまっ黒な仕事着を小ざっぱりした双子に着かえて、顔もあまりくすぶらしていなかった。 「おめえが権太郎というのか。親方は今なにをしている」と、半七は訊いた。 「これからお祝いの酒が始まるんだ」 「それじゃあ差当りお前に用もあるめえ。きょうは蜜柑まきで、お前も蜜柑を貰ったか」 「十個ばかり貰った」と、権太郎は袂を重そうにぶらぶら振ってみせた。 「そうか。なにしろ、ここじゃ話ができねえ。裏の空地まで来てくれ」  表へ出ると、霰がばらばら降って来た。 「あ、降って来た」と、半七は暗い空を見た。「まあ、大したこともあるめえ。さあ、すぐに来い」 ファンド設立・ファンド組成 - ファンド監査 銀座悠和公認会計士共同事務所 お得なクレジットカード比較

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